読書

君のためなら千回でも

いかにも「カンドー系」なタイトルなので多少斜に構えて読み出したけど、読んでよかった。文章のテンポがよくて、読んでてどんどんのめりこんでいった。世界の広さを感じる小説だった。ふだん私達は、努力の量や要領の良さ、または善良さなんかによって世の…

罪と罰

論理だけ研ぎ澄ませていってもうまくいかないぞ、隣人愛と信仰がなくちゃね、という話だと読んだ。ラスコーリニコフとスヴィドリガイノフは「オレにとって何が大事かはオレが決める、オレだけで決めるんだ」っていう立場を取ってて、自分の感覚が好むものだ…

おカネで世界を変える30の方法

働くってことは、より多くのお金を手にすることだけを目的に行われるものじゃない。何らかの形で世の中を良くしていくために行われるものでもある、と思う。また、自分の持っているお金は、投資によって働かせることができる。貯めたお金はただ眠らせておく…

鹿男あをによし

物語の舞台の奈良の魅力がよく出た小説だったと思う。奈良ってお隣の京都と比べるとなんかこう華がなくうすら寂しいような印象があって、この小説でもそんな印象は覆るようなことはないんだけど、そんな奈良もいいものだね、と思える。奈良って遺跡や寺社が…

ネット未来地図

経済的にはWeb業界って広告業界の一部門でしかないんだろうか、ということが気になった。「ポスト・グーグル時代 20の論点」という副題でさまざまなトピックに触れているが、そのうちの半分ぐらいは結局「いかにして今までになかったところに広告を加えるか…

世の中がわかる「○○主義」の基礎知識

世の中に多々ある「○○主義」の簡単な解説と、それらの相対関係をまとめた本。取り扱う「○○主義」の範囲は政治体制(民主主義、立憲主義など)、芸術の表現(ロマン主義、ダダイズムなど)など多岐にわたって、その数は90種類以上。まずたくさんの主義をテーマに…

非属の才能

「絶望に効くクスリ」の延長として購入。みんなと同じようにできない部分、なじめてない部分を気に病まないで、むしろそのみんなと違う部分を大事にしようよ、という話。スーパースター達がいかにある時期ある側面で異端であったか、またそのことが後の成功…

ウェブ時代をゆく

いい本だ。やる気が出た。「無限から有限へのマッピング」というのはいい表現だと思った。文章を書くこともそうだと言えるだろう。頭の中に感覚として存在する書きたいもの豊かさに対して、実際に書ける言葉はあまりにもみすぼらしい。時間をかけて書いたの…

幼年期の終わり

前半はおもしろいおもしろいと思って読み進めていったが、章が進むにつれて物語の焦点と自分の興味がずれてきてあまり楽しめなくなっていった。ネットの書評では最終章を中心とした全宇宙規模、種族単位のスケールでの物語を評価する声が多いようだが、自分…

変身/掟の前で 他2編

変身 これ、要介護の老人や後天的障害者とその家族の話のように感じるな。虫となってからの主人公が、「どうしてこうなったのか」「どうすれば元に戻れるのか」といったことにはあまり思い悩んでいないことがまず1つ。その代わりに、体の痛みやままならなさ…

仕事を加速する技術

思うように仕事が進まない原因3つ。 [原因1]やるべきことの理解というコストのかかる作業を2重、3重にしている [対策1.1]理解したことを再利用可能な形で残すことで将来の問題デコード回数を減らす チェックリスト作成、作業手順作成、テンプレート作成、た…

有頂天家族 (その2)

有頂天家族、読み終えたときにはとても気分が良くていい読書した!っていうすがすがしい気分でいっぱいだったんだけど、1日2日経って落ち着いてみると違和感も表面化してきた。もう一回同じところ抜き書き。 我々は狸である。狸は如何に生くべきか、と問われ…

有頂天家族

面白かった!面白きことはは良きことなり!ゆえにこれは良い本だ。カラマーゾフの兄弟にヒントを得たとのことなので、野暮とは思いつつ無理やり両者を並べてみる。 矢一郎=アリョーシャ 矢二郎=ドミートリー 矢三郎=イワン 矢四郎=アリョーシャ 総一郎=…

リア王

シェイクスピア初挑戦。戯曲を読むのも初挑戦。なかなか癖のあるものだな。当たり前だけど、情景描写がなくて会話だけで話が進むので物語の状況をつかむのにちょっと難儀する。物語の中で起こった動きに対してリアクションがワンテンポ遅れてしまうような感…

いつまでもデブと思うなよ

まず、ダイエットの本道を運動ではなくカロリー制限に置いてあることが新鮮だった。ダイエット法に関して詳しいわけではないけど、なんとなく食事をいじるダイエットは不健康で運動をするダイエットは健康的だっていうイメージがあったので。その根拠として…

よつばと!(7)

やっぱり絵がすごい。1ページ目1コマ目の電柱でもういきなり圧倒された。人物の影もそんなに厳密に書かなくてもいいだろっていうぐらいちゃんとポーズとってる。はー。お話も、「子どもの夏休みは楽しい」→「子どもの生活は楽しい」→「子どもに限らず、生活…

国のない男

もう出ることはないだろうと思っていた、ヴォネガットの新刊を偶然本屋で見つけた。なんかボリュームの割りに高いなとか思いつつもやっぱりうれしくて、衝動買いしてしまった。ヴォネガットの文章を読むのは久しぶりだったけど、そのニヒルで優しい思考は今…

カラマーゾフの兄弟

かなり長い小説だったが、翻訳の良さもあってするっと読めた。登場人物の言ってることや考えてることの半分も分かってないような気がするが、それでもものすごく濃厚な読書体験だった。とにかくいろんな登場人物がみんなよく考えてよくしゃべる。人間とその…

若手SEのためのシステムエンジニアという仕事の流れと役割

先日、「プログラマってすげー人たちだな。俺もプログラム書くのを仕事にしよう」と思って本屋から業務システム開発をしている会社に転職した。他業種からの転職活動段階ではPGとかSEとかの区別はとりあえず気にせずにいたのだが、もうこの業界に入ったから…

しゃばけ

妖怪を従えている病弱の男の子が、江戸の街で殺人事件に巻き込まれるかわいく読みやすい推理もの。ストーリーよりもキャラクターと世界設定がおもしろさの重心で、シリーズが何作か出てるらしい。ライトノベルって読んだことないけどこんな感じか。この本は…

君に届け

『自分の本当に思ってることを正直に言葉にして他の人に伝えるっていうのはどんなにすばらしいことか』というタグを作って「ラブロマ」「赤毛のアン」「逆境ナイン」なんかといっしょにしてやりたい。で、他の人がこのタグを付けた作品を片っ端から読んでや…

「世界征服」は可能か?

漫画やアニメに登場する世界征服をたくらむ悪の支配者達の分類から始まって、実際に世界征服を実現しようとすればどんな問題に直面するかというシュミレーション、そして最後には世界征服ってはたしてうまみがあるの?という疑問から現代社会のしくみに着地…

ルサンチマン 1〜4巻

こないだ初めてエロゲをやってみて、やっぱりこういうものは不健全であって袋小路へ至る道だという認識を再確認した。個人としてはもう立ち入らないでおこうと思う。しかし、だからエロゲはいかんとか高みから正論で仮想現実をまるごと批判するような振る舞…

四畳半神話大系

私は森見さんの小説に出てくる自信過剰で理屈っぽくて臆病な男子大学生が好きだ。好きすぎるので彼らの行動をたやすくまるごと肯定してしまい、結果的に小説のテーマをつかみ損ねてしまっているような気がしないでもなかった。でもこの小説に出てくる奴らは…

夜は短し歩けよ乙女

モ・リ・ミ!モ・リ・ミ!これもおもしろいぞ!いやしかし、この乙女は良い乙女だ。女性としてリアリティがないなどという声もあるかもしれないが、これはこれでいいのだと思う。この話に必要なのは女性ではなく乙女だ。好奇心をみなぎらせ、常に感謝の念を…

太陽の塔 (新潮文庫)

ああ、おもしろかった。間違いなく今年の読書のベスト3には入るだろう小説。読みながらふつふつと生命力が湧いてくるのが分かる。そうだった。自分はこうありたかったのだ。自分はこうあらねばならんのだ。俺は俺みたいな奴を俺もろとも喜ばせるために、もっ…

ソクラテスの弁明・クリトン (岩波文庫)

スティーブ・ジョブスが 私は持っているテクノロジーをすべて引き替えにしても、ソクラテスとの午後のひとときを選ぶね。 スティーブ・ジョブスの10の教え | Lifehacking.jp なんて言うもんだから、ソクラテスがどんな人物なのか気になって「ソクラテスの弁…

新釈 走れメロス 他四篇

すごくおもしろかった。この作者の本は全部読もう。本家の文学作品は山月記と走れメロスしか読んだことがなかったんだけど、それ以外の3編もすごく楽しめた。でも本家を読んだことのある2編の方がより趣向が分かって楽しめたのは確か。他のも本家と読み比べ…

パンク侍、斬られて候

なんじゃこりゃ。こんなふざけきった小説初めてだ。それでいて楽しい。あほをあほとして書く、突き放した態度が新鮮。そのあほ達に対するイラつきがやけに饒舌で表現力が高くておもしろい。読んでも何も残らなかった気がするし、何が書いてあるから読めとも…

闇金ウシジマくん(1)

ウシジマくん怖ぇ。読んでる間中、実際にはしてもいない借金に対する後悔の念で吐き気がしていた。いや、正しくは借金に対する後悔じゃなくて、借金に至らしめる自分の愚かさ、それを許してきたこれまでの生き方に対する後悔だ。そういうものは程度の違いこ…