カーズ(2)

物語もよかった。
テーマは一見「あくせくすんなよ、のんびりいこうぜ」っていうスローライフのすすめのようであるけど、実際は都会的な価値を否定することもないもっと現実的でバランスの取れたメッセージだったように思う。「異質な他人と関わり合うことで、一人のときより幸せになれるよ」っていうような。

マックイーンがラジエータースプリングスの住人たちから日々を楽しむこと、他人を大事にすることを教えてもらってるのと同時に、村の住人たちもマックイーンから都会的な気の張った充実感を教えられている。ピカピカになった道路に釣り合うように店をきれいにしたりとか。メーターの夢がかなったのだってマックイーン達の今までの積み重ねがあってこそだ。片方がもう片方を啓蒙するのではなく、異質な2者が互いに影響しあう。レースのドライバーとメカニック、スポンサーの関係も同じように、得意分野の異なる者たちが協力し合うことでお互いがいい仕事をできる。

「いい仕事をする」っていうのが幸せの重要事項に据えられてるのも、この映画がただののんびり推奨映画ではないってことだ。マックイーンがラジエータースプリングスのみんなにお礼としてやってあげたことが、「仕事をさせてあげる」ということだったことにちょっとウルっときた。なんて嬉しそうに働くんだ、働くってことの根っこの喜びはこういうことだったよなって。

やっぱり、「人生、24時間遊んで暮らせるのが理想」ってのは違和感を感じる考えだなあ。それでは力を持て余すように思う。「遊んで暮らす」と言うときの遊びにはそれを受け止めるだけの深みがあるのだろうか。やっぱり仕事であるとか何か技術の向上とか、そういうものがないとつまんないんじゃないかと思うが。