日帰りバスツアーでお遍路体験をした。その中で30分ほど法話を聞く機会もあり、お遍路のルーツや真言宗の考え方の概要をざっと聞くことができた。素人向けに端折った話をまた端折るなら、「生きるって基本的に楽しいことじゃなくて辛いことだよ。でも、『この世の全ては変化していくものだ』ってことを知っていればいくらか楽になるよ。また、『死後はちゃんと極楽に行ける』ってことも知っておくとまたいくらか楽になるよ。」ってことだった。

なんで「全ては変化してゆくもの(色即是空)」という認識が苦しみを和らげるのか。生きる上で代表的な苦しみをリストアップすると、生、老、病、死、愛別離苦、怨憎会苦、求不得苦、五陰盛苦となるが、これらは一般化すると「○○であってほしいのに実際は△△である」という願望と現実の不一致である。で、すべては変わっていくものだよ、という考え方は前者の願望の部分に働きかけて軟化させる。「全ては変わっていくというのに、そんなこと望んでもしゃーないな」と。結果、願望と現実のギャップはぼやける。楽になる。

それだけじゃどんどん無気力で退廃的になるから、ちゃんと功徳を積んで死んだら極楽に行けるよ、それは空とかじゃなくて確かだよ、という構造を追加する。活力のために仏道の追求だけは欲望として許される。誰も行き来できない生死の境目の両側に、「何も確かなものはない」という鉄壁の防御と「絶対の真理」という力の源を配置する。矛と盾を三途の川で隔離しつつどちらも利用する。そんな感じか。