でもおかげで自分が漫画版逆境ナインをどう好きなのか理解するヒントになった。キャラやプロットではなく、その中で展開される屁理屈のような理屈と、その理屈に重きをおく作品世界のルールが好きなんだ。熱血漫画の主人公なんだから、めんどくさい屁理屈なんてこねないでただひたすら不言実行で熱血していてもかまわないはずだ。でもこの漫画には理屈が付いて回る。登場人物の力を引き出すにはかっこいい理屈が必要で、主人公の不屈闘志がこの漫画世界の中で強いのは、野球スキルがどうこうよりも見事な理屈をひねり出すからだ。主人公の強さの根拠を理屈の完成度に置くことで、この漫画は「なるほど、この理屈は納得できる。ということは、この不屈の強さは俺にも備わったのではないか?」と読み手に思わせる効果がある。漫画と現実世界が屁理屈で橋渡しされ、主人公の熱さが現実世界の読み手までその橋を渡ってくるのだ。今、自分の目の前の現実のために使える力を与えてくれるからこの漫画が好きだ。「より遺伝的にエリートな奴が強い漫画」や「より重いトラウマを背負った奴が強い漫画」「そもそもその場の都合で誰が強いか決まる漫画」などよりは。
逆境ナイン (1) (サンデーGXコミックス) 逆境ナイン (2) (サンデーGXコミックス) 逆境ナイン (3) (サンデーGXコミックス)  逆境ナイン (4) (サンデーGXコミックス) 逆境ナイン (5) (サンデーGXコミックス) 逆境ナイン 6 (6) (サンデーGXコミックス)