東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~を読む。
読んでて苦しいなあ。「人はみな、母親の人生を食いつぶして大きくなる」っていう原罪のようなものと直面させられるのが苦しい。どんなに手のかからないよいこだって、母親の人生の時間と労力を大きく奪い、なにか社会的に事を成したりするような可能性を奪わずに成長することなどできない。子は親の人生を食う。

そして、その関係は親が年老いていくことでいつか反転する。または、子を産むことで自分が他人に人生を食わせてやる側に回る。それは経済的な視点から見るとその人の損失だが、それでも人は親の面倒を見たり、子を産んだりする。非合理だ。しかし、他人のために骨を折り、人生を捧げることでそこを流れる、愛情を計算に入れてやることでそれは非合理ではなくなる。

気を抜けば人間の行動全部が経済合理性で説明できそうな気分になってしまうこのご時勢だが、この本は人間社会には別の力学も働いているということを思い出させてくれる。