[読書]夜のピクニック

夜のピクニック (新潮文庫)

夜のピクニック (新潮文庫)

いい小説だった。新書なんかは知りたかったことを知ることができるっていうのがいいところだけど、小説のよさは知ろうとも思わなかったことを知ることができるってことなんじゃないだろうか。深まる知的快感と広がる知的快感。

幸福の成分をもう一つ発見した。「周りの人への敬意、好意」だ。この物語、主人公の二人に関しては意固地さだったり嫉妬だったりと嫌な面も描いてるけど、その2人をとりまく友人たちに関しては魅力的な面ばかり描いてる。これは単に視点の差であって、客観的にすばらしい友人に恵まれたひねくれ者2人の話というわけではないだろう。自分の至らぬ点と他人の魅力的な点を選択的に意識に上らせ、言語化するという姿勢がこの小説の舞台装置で、結果的に発生する2人から放射状に広がっていく好意が読んでて幸せな気持ちにさせる。他人の魅力を感じ取るっていうのは、幸福を感じとるっていうのとすごく近いんだろう。

昼間では絶対にしないような熱い話や恥ずかしい話ができる夜っていいな。