のだめカンタービレ」のドラマ最終回を最後のオーケストラ演奏シーンだけ見た。今まで気に入った原作の映像化作品を見てがっかりしなかったためしがないので今回もドラマはほとんど見てなかったのだが、今回のこのシーンはすごくいいと思った。

千秋をはじめとする、奏者たちの表情がよかった。経過をすっとばして見た自分にも、ここに至るまでの死力を尽くしてきた時間の存在を感じさせてくれた。やっぱ本物の人間の顔って、絵に比べるとすごい情報量なんだな。藤田和日郎の大ゴマなんかはすごいと思うけど、あれでずっとやっていくこともできないもんな。

時間の長さとその間の緊張感がよかった。漫画ってどんどん次の台詞を読んでいくから、1曲分の時間の長さの質感がよく分かってなかった。あと、漫画は文章を読むっていう多少能動的な動作をしてるからか、ただ状況を固唾を呑んで見守るしかないっていうじれったいような緊張感が原作にはない良さとして出てた。

音楽がよかった。やっぱり音楽にまつわる話なら実際に音楽が聞こえたほうがいいわ。直接演奏が聴けると「こいつのすばらしさのために人生かけてんだ」っていうキャラクターの理解もより深まる。やっぱり漫画は音を直接書けないから、原作も音楽の良さそのものを書けなくてちょっと迂回した表現をとらざるを得ないんだけど、そういうのって主客転倒してしまう恐れがある。料理漫画が味の優劣でなくて「だから旨いんだ」っていう味を支える理屈の優劣を競うようになり、さらには普通に流通している食材の欠点をどれだけ上手に指摘できるか勝負になったりする。旨いものが作りたいっていうキャラクターの理解には直接結びつきづらい。