ベン・ハー

漫画「逆境ナイン」で主人公の不屈闘志が「とりあえずこれだけは観てくれっ!そうしなければ心が通じ合えんっ!」と言って挙げた作品リスト(ベン・ハー、ロッキー(1,2)、七人の侍巨人の星、仮面ボクサー)を真に受けて、ベン・ハーを観てみた。

今「ローマ人の物語」読んでる最中だからか、ユダヤ人よりローマ人びいきな目線で観てしまっていまいち主人公と心を一つにできなかった。ローマ兵が「皇帝こそ唯一の神だ!」って台詞を言うのを聞いて、多神教のローマ人はそんなこと言わないよ!って思ってしまったり。馬車レースの場面でも主人公は白馬なのに対し、ライバルのローマ人は黒い馬でトゲのついた馬車に乗らされてたりと、なんかこいつら悪役ですよって表現が露骨でちょっとヒネた目線で観てしまった。そういう目線で作品に触れてしまったときはたいてい不毛になるからあんまりよくないんだけどな。

ヒネた見方は宗教的な部分にもひっかかりを覚えさせる。癩病にかかった母と妹がキリストの奇跡で回復し、それを機に主人公が憎しみを捨てて成長するんだけど、そんなもので映画の中の話をきれいにまとめても現実には何の救いにもならないじゃないかって思ってしまう。キリストの奇跡とは違った希望を、この現実にも使える希望を提示してくれよと思った。

でもそれは欲張りなんだろうな。今の時代に家族が病気にかかったなら、やるべきこと、試すべきことはたくさんある。病気について調べたり、良さそうな病院を探したり、治療費を工面するために仕事がんばったりとか。でも、この時代のこの人たちには何ができる?祈り、すがる以外にできないんじゃないか?今の時代のこの国に住んでる自分が、これを観て「おいおいそれで病気治っちゃうのかよ」って批判するのはなんかやっぱりおかしい気がする。問題の解決の保証でなく、問題解決のために試してみる価値のある行動が希望だとするなら、映画に教えてもらうまでもなく今の世の中には既に立派な希望がある。絵に描いた餅だけじゃなくて。

ベン・ハー 特別版 [DVD]

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