山田ズーニーのおとなの進路教室 Lesson23

「時間というのはその人の命の切り売りだから、社員には人間として成長してもらわないと時間を使わせている者(雇用している者)として申しわけなくてしょうがない」という話にぞくっとした。時間が人生そのものであるから無駄にしてはいけないという認識はあるにはあったが、それはあくまで自分自身の人生であるという認識でしかなかった。時間っていうのは命そのものなんだから無駄にするな、勤勉であれ、と。でも社会で生きていく上で人はあらゆる場面で他人の時間を使わせるし、そうしないと何もできない。人は他人の命を食い散らかす。そのあまり意識してこなかった宿命の重さにずんときた。

だからせめて成長せねば、成長してもらわなければという希望のありかたに対する腹のくくりかたに大人のかっこよさを見た。幸せってなんだろうね、難しいね、という態度で自らの幸福論をずっと保留にしておけば楽に生きることもできようが、社会にたいしてなすべきことを失うし前述のような他人に対する責任も果たせない。ひずみゆがみがあろうと自らの幸福論を打ち立ててそれに従って生きるのが大人というものの在り方なんかなと思った。他の人達の命のためにも、大人になる。