夜は短し歩けよ乙女

モ・リ・ミ!モ・リ・ミ!これもおもしろいぞ!

いやしかし、この乙女は良い乙女だ。女性としてリアリティがないなどという声もあるかもしれないが、これはこれでいいのだと思う。この話に必要なのは女性ではなく乙女だ。好奇心をみなぎらせ、常に感謝の念を持ち善意にあふれた人間の有り方としての乙女だ。男と漢が違うように、女と乙女も違った概念である。乙女性は何も女性にしか備わらないものではない。男だって乙女チック回路を搭載してみたいと思ったりする。象の尻と出会った時には下らないと吐き棄てるよりも、触れた手のひらで現実の厳しさを知り、作者の発想に感服できる方がいいに決まってるだろう。乙女チック回路は男が生きていく上でも良きものである。完成された人格を目指す者としては、ぜひとも組み込んでおきたい。また己の心に組み込むことが難しければ、せめてその回路を持つ者と世界を分かち合いたい。この本は第一にそういう乙女性を欲した一人の男の物語であって、第二には読者が乙女チック回路によって加工された世界を楽しむという趣向であるので、登場する女性が自分の何をも代弁してくれていないというのは構造上しょうがないんじゃないかと思う。

夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女