[読書]おとなの進路教室。
著者のズーニーさんは本当にていねいに考える、表現する、行動する、ということをやってきた人なんだなあと感心する。どのコラムも自分自身の正直な思いを掘り出して磨き上げたものだという感じが伝わってくる。

ほぼ日のコラムは一時期楽しみに読んでいたが、ある時から「ちょっとこの人の過剰な真面目さが辛い」と思って読まなくなった。その転機になったのがこの本にも収録されている「勉強?それとも仕事?」のシリーズだった。当時の自分には仕事の目的を自分の成長と考える姿勢の足下をゆさぶられるのが辛かった。そのころ自分はまだ働いてなくて、自分自身の成長への期待は働くことと自分とをつなぐただ一本の希望の糸だった。今そこを切ってしまっては働くことや社会から切り離されて深い穴に落ちてしまう。危険だ、やめてくれ、と思った。しかし実際に働く今になって本で読み返して見ると、とても大事なことが書いてある、と思う。真摯に問いに取り組むズーニーさんの姿勢はとても勇気づけられるもので、それが何か過剰でアンバランスな物だとは思えない。

この議論を通して考えてみると、こんな仕事の定義が浮かび上がってくる。

  • 特に親しくなれそうでもない、よそよそしい他人に対して
  • めんどくさいにもかかわらず
  • 自分の好みでなく、役割に基づいて
  • 自分が楽しむでなく、その人を喜ばせる

絶望的な定義のようだ。仕事とはこんなものだと当時の自分に投げつけたら、そうじゃない仕事もあるはずだ、と反撃をくらうだろう。希望ある仕事などない、と言ってるように解釈されるだろうから。でも違うのだ。こんなふうに定義される仕事の中にだって、希望はやっぱりあるのだ。好きなときに好きなことをする、という形ではないけれど。

例えば、消費のセンスに基づいたアイデンティティよりも、役割に基づいたアイデンティティの方が強い。気分に基づいたモチベーションよりも、他人との関係性に基づいたモチベーションの方が強い。そんなふうに。

おとなの進路教室。

おとなの進路教室。