非属の才能

絶望に効くクスリ」の延長として購入。みんなと同じようにできない部分、なじめてない部分を気に病まないで、むしろそのみんなと違う部分を大事にしようよ、という話。スーパースター達がいかにある時期ある側面で異端であったか、またそのことが後の成功にどれだけ貢献したか、という例をたくさん引っ張ってきて、「属さない」ことのすばらしさを説く。

登場する人物達の例が偏っているとは思う。女性と付き合うことを15歳の段階で100%あきらめて自分の好きなことに没頭していた荒俣宏さんが美人スチュワーデスと結婚できた、という例は、ファッションやデートマニュアル的知識が逆効果になることの証明にはならない。統計的にもさほど影響を与えないだろう。

しかし。人に希望を与えるという点においては大いに意味がある。そしてそれこそがこの本の目的であり、一般に信じられていることが統計的に間違っているという本ではない。この本が攻撃対象にしているのは一般に信じられている確率モデルそのものではなく、その確率モデルに思考を縛られてしまい、そこにある希望に気付けずに絶望してしまっている不自由な心だ。何かを為すために成功率60%の方法と50%の方法があるとして、何らかの理由で60%の方法が自分には使えなかったとする。そのとき、みんなが使っている60%の方法が使えないことに絶望して、自分の手の中にある50%の方法を試さずに結果的に0%にしてしまう、それこそがもったいないことだということだと思う。何らかの理由による10%のダウンよりも、そのことについてひねくれて絶望して何もしなくなる50%のダウンの方がずっと問題だ。もちろん、現実には何においてもこんなふうに事前に数値では分からない。でもだからこそ、みんなと同じようにできないことを過少に評価してしまうのだろうと思う。

誰の中にもマイノリティである部分はある。不安に思い、コンプレックスに思い、それゆえに力が出せなくなっている部分はある。絶望に効くクスリ、もしかしたら命を救うクスリがここにある。

不登校は負け犬じゃないし、球技大会で活躍する生徒がヒーローとは限らない。
うまくしゃべれなくていいし、年中、空を見上げていてもいい。
・・・(中略)・・・
デブでもゲイでも、年寄りでも独身でも、ノーメイクでもノイローゼでもいい。
友達がいなくてもいい。最下位でもいい。したいことだけしていてもいい。
「そんなバカなことをわざわざ本にするな!」とお怒りの方もいるだろう。
でも僕は、それで命が救われる人がいると本気で思っている。

非属の才能 (光文社新書)

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絶望に効くクスリ―ONE ON ONE (Vol.1) (YOUNG SUNDAY COMICS SPECIAL)

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