君のためなら千回でも
いかにも「カンドー系」なタイトルなので多少斜に構えて読み出したけど、読んでよかった。文章のテンポがよくて、読んでてどんどんのめりこんでいった。
世界の広さを感じる小説だった。ふだん私達は、努力の量や要領の良さ、または善良さなんかによって世の中の幸福はある程度比例配分されているという前提の下で生きている。市場がちゃんと機能していることを前提としているというか。でも、世の中を広い目で見るとそんな前提は全然成り立っていないということを思い知る。
政情が動けば個人の生活が吹き飛ぶ。銃を持ったならず者がいれば正義が役に立たなくなる。マイノリティに生まれれば善良で頭がよくても貧しい暮らしを余儀なくされる。たまたま自分の手に豊かさが回ってきたって、それは自分がよい人間だからってわけじゃない。
そういう世界では、それが自分の身にふりかかってきててもおかしくなかった不幸に苛まれる人達を見るにつれ、たまたま自分の所に来た幸福をネコババして独占してしまうにつれ、罪の意識が募る。それは経済的なことだけじゃなく、愛情に関してもそうだ。
期待や恩、愛情に応えることができなかった負い目を贖う物語。いい本読んだ。
- 作者: カーレド・ホッセイニ,佐藤耕士
- 出版社/メーカー: 早川書房
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