君のためなら千回でも
いかにも「カンドー系」なタイトルなので多少斜に構えて読み出したけど、読んでよかった。文章のテンポがよくて、読んでてどんどんのめりこんでいった。
世界の広さを感じる小説だった。ふだん私達は、努力の量や要領の良さ、または善良さなんかによって世の中の幸福はある程度比例配分されているという前提の下で生きている。市場がちゃんと機能していることを前提としているというか。でも、世の中を広い目で見るとそんな前提は全然成り立っていないということを思い知る。
政情が動けば個人の生活が吹き飛ぶ。銃を持ったならず者がいれば正義が役に立たなくなる。マイノリティに生まれれば善良で頭がよくても貧しい暮らしを余儀なくされる。たまたま自分の手に豊かさが回ってきたって、それは自分がよい人間だからってわけじゃない。
そういう世界では、それが自分の身にふりかかってきててもおかしくなかった不幸に苛まれる人達を見るにつれ、たまたま自分の所に来た幸福をネコババして独占してしまうにつれ、罪の意識が募る。それは経済的なことだけじゃなく、愛情に関してもそうだ。
期待や恩、愛情に応えることができなかった負い目を贖う物語。いい本読んだ。
- 作者: カーレド・ホッセイニ,佐藤耕士
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/12/19
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21世紀のドストエフスキー
NHKのETV特集で「21世紀のドストエフスキー〜テロの時代を読み解く〜」の再放送を見た。番組内容と自分の感想をごっちゃにしてメモ。
人間
現代の物語は、人間が持つたくさんの性質をキャラクターとして切り分ける。一方、ドストエフスキーは矛盾したもの、揺らぐものを1人の人物の中に詰め込む。ドストエフスキーの小説の登場人物は個性的ではあるけれど、いわゆるキャラが立っているというのとは少し違う。「このキャラならこの状況ではこう言うだろう、こうするだろう」ということが簡単には思い浮かばない。しかしそれが物語の深みとなっている。
悪
殺人も戦争も、主観的には「正当防衛」であるという意識を持って行われる。罪を犯す人間は自分達とは別種の人間なんだと思いたいけど、本当はそうではない。
また、そのような悲劇を野次馬的に望んでしまう獣性も個人の中にある。テレビで911テロの様子を見たときに、ちょっとワクワクしてしまったように。
信仰
ドストエフスキーの信仰の対象は「生命そのもの」なんじゃないだろうか。「神」は生命そのものに関心を促すための方便?一方、現代の日本の若い人は信仰を恋愛に求める。崇拝できる相手を探してる。他方、信仰を欲しない人たちもいるが、その人たちは実のところ自分が神になろうとしている。
- 信仰をもつよ派
- 信仰を持たないよ派(=むしろ自分が神になりたいよ派)
- 狭い世界に限定すればそこそこ神らしくできるよ派(オタク、職人)
- 万能の力を持つ金をたくさん手に入れて神を目指すよ派(資本主義)
- 自分の脳内ですべてを完結させれば自分が神だよ派(妄想)
- 神のようになろうとすること自体が大事だよ派
自分の命より大事なものはあるよ/ないよ の方が重要だろうか。
罪と罰
論理だけ研ぎ澄ませていってもうまくいかないぞ、隣人愛と信仰がなくちゃね、という話だと読んだ。ラスコーリニコフとスヴィドリガイノフは「オレにとって何が大事かはオレが決める、オレだけで決めるんだ」っていう立場を取ってて、自分の感覚が好むものだけから成る理想を定義し、それを実現する論理を組み上げていった。そういう理屈はたいてい自分自身に超人であることを求めるが、自分自身の能力も他人の為すことも実際には思い通りにいかず、ついにはクラッシュする。
「えー、でももしラスコーリニコフが本当に超人的だったら問題なかったんじゃね?問題は能力不足であって自分一人で理想を組み立てることじゃないでしょ」という疑問に「いやいややっぱり能力のレベルの問題じゃないよ」って答えてるのがデスノートかな。
- 作者: ドストエフスキー,Fyodor Mikhailovich Dostoevskii,江川卓
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1999/11/16
- メディア: 文庫
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DEATH NOTE デスノート(1) (ジャンプ・コミックス)
- 作者: 小畑健,大場つぐみ
- 出版社/メーカー: 集英社
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SRIファンドってどれだけ役に立つんだろう
じゃあ貯金はどうしとけばいいんだろう、なんか社会の役に立つような貯めときかたはないかな、と思って頭に浮かんだのがSRI(社会的責任投資)ファンド。環境問題や社会貢献に積極的な企業の株を買って応援しつつ利益を狙う投資信託。
でもこれって、どれだけ社会貢献になるんだろう。その会社の株を買う、ということがその企業自身にとってどんなメリットをもたらすのかがよく分からない。市場で株を買うってことは、その株を売りたい誰か別の人から買うわけで、企業にとっては関係のない話のように思える。
調べてみたら、
- 新株発行の時に多くの資金を調達しやすくなる
- 企業の評判が上がってなにかと有利(銀行からお金を借りるときなど)
ということのようだ。
企業、株価上昇のメリット | いま聞きたいQ&A | man@bowまなぼう
MSN Japan - ニュース, 天気, メール (Outlook, Hotmail), Bing検索, Skype
でもこれらのページで挙げられているどのメリットも間接的なもので、少なくとも俺が1万円分その企業の株を買ったからといってその企業が1万円分助かるとかそういうことはない。むしろ、すぐに必要でない自分のお金がさしせまって必要な人のところに行って今以上の活躍をしてほしいのに。SRIファンドは今の希望にはあまりそぐわないようだな。
銀行に預けたお金の3%はアメリカの軍事費になる
かりに30万円を銀行に預けていると、銀行はその6分の1の5万円を国債の購入に当てています。そして5万円の約10%、5000円が米国債購入に当てられます。米国の予算のうち約20%が軍事費ですから、私達が銀行に30万円を預けていると、3%の1000円が戦争のために使われてしまうのです。
国に渡したお金の10分の1が米国債になるって、ほんとに?多すぎない?と思ってちょっと確認。
http://www.asahi.com/business/data/kokus112.html
によると、2007/01〜2007/12で外貨準備高は8.5兆円ぐらい増えてる。(1$=110円として)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014.htm
によると、一般会計の歳入総額は83兆。外貨準備高の増加分のうちどれだけが米債なのかよく分からないけど(リンク先によると外貨の大部分が米財務省証券に投資されている、とのこと)、10分の1が米債になるっていうのはおおよそ正しそう。多いな…。
銀行に預けたお金の3%がアメリカの軍事費になるっていうのは気分悪い話なので、わずかではあるけれど、自分の貯金は別の生かし方を考えてやりたい。
おカネで世界を変える30の方法
働くってことは、より多くのお金を手にすることだけを目的に行われるものじゃない。何らかの形で世の中を良くしていくために行われるものでもある、と思う。また、自分の持っているお金は、投資によって働かせることができる。貯めたお金はただ眠らせておくだけじゃもったいないからしっかり働いてもらおう、とも思う。
この2つの考えがこの本で連結されて、「自分のお金にもリスクとか利回りばっかり気にさせるんじゃなくて、世の中を良くするという視点を加えて働いてもらおう」という考えが生まれた。世の中の役に立つようなお金の使い方、貯金、投資の仕方というのはどんなものがあるのか。この本にもフェアトレード、NPOバンク、SRIファンドなどいくつかヒントになりそうなキーワードが紹介されていたが、自分でも調べて行きたいと思う。
NPOバンクって存在は今まで知らなかった。福祉や環境、地域社会のために活動するNPOや個人に出資する銀行らしい。この本の編集をしてる「エコ貯金プロジェクト」のサイトでも、その活動が紹介されている。
http://www.aseed.org/ecocho/
「まずは利息や配当収入だけで自分の生活がまかなえるという経済的自立を果たすべきで、人生を享楽的に楽しむにせよ他者に奉仕するにせよ、それらはその後の話」という考え方がある。でも、世の中ってそんな状況に到達した人たちだけの善意で足りるの?って思う。『Global Rich List』によると俺は世界の上位10%に入るようなリッチマンなんだから、今の段階でも何かできることはあるはず。
- 作者: 田中優,A SEED JAPANエコ貯金プロジェクト
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- 発売日: 2007/12/01
- メディア: 単行本
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Global Rich List
自分の年収を入力すると、自分が世界で何番目に豊かであるかが分かるサイト、「Global Rich List」を試してみた。
http://www.globalrichlist.com/
うーん、けっこう上のほうだ。地球の人間全体を一つの組織だと考え、収入をその組織内での権力だと考えると、俺もそれなりの権力者だ。もし組織の中でこのぐらいの地位にいながら全体のことをちっとも考えず、自分とその周囲のことだけを考えてるような人物がいたとしたら、そいつはちょっと困ったやつだな、と思う。
「ノブレス・オブリージュ」なんて概念はもっと地位や能力が高い人たちのものだと思ってたけど、今の自分にもある程度のそれはあるんだと思う。
まずは家計簿サイトの開発を進め、自分のお金(=力)の使い方に自覚的になれるしくみを作ろう。